ほんじゃーねっと

おっさんがやせたがったり食べたがったりする日常エッセイ

たまごサンドのお願い

思春期の子どもと暮らしていると、お願いを聞いているのに怒られる、という理不尽な扱いを受けることがままある。

質問をしすぎると「断る理由を探してるんでしょ!」と誤解して「もういい!」と怒って行ってしまったり、何も聞かずに「いいよ!」と答えれば「投げやりになっていない?ほんとはいやなんでしょ!もういい!」と早とちりして怒って行ってしまったり。

こうして思い出すと、いやまずもう少し機嫌の良い時に来なさい、と言いたくなってきたが、とにかく素直に受け取ってもらえないケースを考慮して対応しないといけないのである。もっと判断材料がほしいけどこれ以上質問したら怒りそうだしな、とか全く問題ないのだけどとりあえず1つ何か質問しておくべきかな、とか。

お願いをされる側というのはもう少しこう…悠然と構えてほうほうなるほどそういう事情なら叶えてやろうではないか、とやや上から目線で対応しても許されるものではなかったか。

そんなことを思い出したのは昼休み。 近所のスーパーで昼食の買い物をしているところだ。

ダイエット中の私にとって平日の昼食は1週間の食事の中でも重要な位置を占めている。昼食のカロリーが高いか低いかで体重が増えるか減るかが決まると言っても過言ではない。

昼食だけじゃなくて毎食注意しろよって話ではあるのだけど、朝食は元々食欲が湧かないので気にしようがしまいがカロリーは抑えられるし、夕食は我慢しようと思ってできるものではないので食べ過ぎてカロリーオーバーするのはしかたない。 間の昼食しか工夫の余地が残されていないのだ。

今日のターゲットはキャベツである。 キャベツを一気に炒めてタッパーに入れておき、それを昼食として少しずつ食べていくという絶対やせそうな挑戦を先週から始めたのだ。 体重を自在に操る俳優、鈴木亮平も「天皇の料理番」で体重を20kg減らした時は「キャベツを食べて痩せた」と言ってたので間違いない。

野菜コーナーでキャベツを買い物カゴに入れ、飲料コーナーで見つけたダイエットペプシもついでに入れる。こんなに真っ黒で甘い炭酸飲料をカロリーゼロにできるならカツ丼と焼きそばもカロリーゼロにできそうな気がするのですがまだ無理なのでしょうか?私のダイエットのためにぜひとも優先度を上げていただきたい。

買うべきものはこれだけなのであとは余計なものを買わないようにレジに向かうだけなのだけども、ここからレジまでの間には昼食メニューが並ぶ惣菜エリアが待ち構えている。には丼ものと揚げ物、左にはおかず類と挟撃の構えである。

お約束としてはここで誘惑に負けてカツ丼を買って食べてしまい、ダイエットミッション失敗、という流れなのだけど、今日は大丈夫。惣菜コーナーがあることは買い物に出る前にシミュレーション済みである。私は来ると分かっている誘惑ならあらかじめ心の準備をしておくことで避けることができるのだ。

カツ丼コーナーを余裕を持ってスルー。 しかしあと少しで惣菜エリアを抜けようというところで、その子が待っていた。

"一度は食べていただきたい、たまごサンド"

たまごサラダを食パンで挟んで2つに切ったちょっと大きめのたまごサンド。その子が私にお願いしている。一度は食べていただきたい、と。

これまたお約束としては「確かに一度も食べたことがない、お願いされたら食べてみないとな!」と我を忘れてカゴに放り込んでしまいダイエットミッション失敗、という流れだが…既にこの流れは「一度は食べていただきたいシリーズ」で過去に経験済み、もとい敗北済みである。

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初見ならともかく既に知っているフレーズに惑わされて我を失うことはない。このたまごサンド自体は一度も食べたことがないが、食べていただきたいと丁寧にお願いされても断…れ……る…

…?

…お願い?

…丁寧にお願い?

通り過ぎようとした私の頭に浮かぶ、不機嫌そうな我が子のお願いと答えも聞かずに怒って去っていく姿…。

そんな彼女たちの理不尽なお願いですら聞こうとしている私が…!

このたまごサンドの丁寧なお願いを!

断れるだろうか?!

いいや断れない!

それよりなにより、私はたまごサンドが好きだから!カツ丼と焼きそばの次くらいに好きだから!食べていただきたい?ええ食べましょうとも!

というわけでたまごサンドはカゴに放り込まれ、お約束どおりダイエットミッションは失敗。今日の昼食はヘルシーなキャベツ炒めではなく大きめたまごサンドになったのでした。

まあこれはしかたないよね。